【男子バレー日本代表を率いる監督ってどんな人なのか知りたい!】
「ここ最近の全日本男子バレーボール代表は世界の強豪国と対等以上に戦えている!もちろん、石川祐希選手とか高橋藍選手のような海外でも活躍できる選手が出てきたから。というのもあると思うけど、監督もすごい人だったりするのかな?史上最強と言われる男子バレー日本代表を率いている監督について詳しく教えて!!」
どんなスポーツでもチームにおける監督の影響力は絶大。選手・スタッフは代わっていないのに監督が代わることで優勝候補が順位を落としたり、逆に注目されていなかったチームが監督の手腕によって優勝争いをしたりしてしまう。多くの人はスター選手の活躍に注目すると思いますが、今回の記事ではそんなスター選手達をまとめ上げ、チームを勝利に導く「監督」について、解説をしていきたいと思います。
目次
・ロラン・ティリ監督のプロフィール
・ロラン・ティリ監督のキャリア
・ロラン・ティリ監督の育成方針
過去、植田辰哉や中垣内祐一、フィリップ・ブランなどが男子バレーボール日本代表を率いてきましたが、近年で成績を伸ばし始めたのは2017年~21年の中垣内体制の頃から。日本代表が強くなった理由はジュニア世代の育成が徐々に改善されてきたことと、この時にコーチをしていたフィリップ・ブランの手腕が大きかったと言われています。2021年よりフィリップ・ブランが監督を務め、パリ五輪で7位という結果も出しています。そんなフィリップ・ブランよりバトンを渡された「ロラン・ティリ」がどんな監督なのかを詳しく解説していきたいと思います。
・ロラン・ティリ監督のプロフィール

・ロラン・ティリ監督のプロフィール
まずはロラン・ティリ監督の簡単なプロフィールから紹介していきたいと思います。
プロフィール一覧 ※2025年8月時点
出身地 | イタリア(国籍はアルジェリア) |
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生年月日 | 1963年12月1日 (61歳) |
身長/体重/ | 193㎝/83kg |
現役時代のポジション | アウトサイドヒッター |
監督・コーチ歴 | 24年間(2001年~) |
現職 | 日バレーボール日本代表監督(2024年11月~) |
趣味 | 寺社仏閣巡り/ワイン |
ロラン・ティリは体格からもわかるようにもともとプロのバレーボール選手として活躍をしていました。現役時代は短いけど名監督。というキャリアの人もたくさんいますが、ロラン・ティリはフランス代表でも活躍するような一流選手だったようです。また、日本文化が大好きな親日家というのは有名な話。日本食を好み、特にうどん・おにぎりをよく食べているそうです。また、大阪ブルテオンの監督をしていた頃は休日に自転車で京都の石清水八幡宮で桜や紅葉を楽しんでいました。
・ロラン・ティリ監督のキャリア

・ロラン・ティリ監督のキャリア
ロラン・ティリは、もともとプロバレーボール選手だった監督です。なので、監督としてのキャリアに加えて、現役時代の活躍についても触れておきたいと思います。
ロラン・ティリ監督のキャリア
●1982年~:現役選手としてクラブチーム・代表チームで活躍
●2001年~:現役を引退し、クラブチーム・チェコ代表の監督に就任
●2012年~:フランス代表の監督に就任 ●2020年~:大阪ブルテオン・日本代表の監督に就任
現役選手としてクラブチーム・代表チームで活躍
ロラン・ティリは1982年にフランス・リーグAのASカンヌでデビューし、2001年に引退しています。高いジャンプ力と力強いスパイクが持ち味で、戦術理解にも優れていたそうです。特に1980年代後半から1990年代初頭にかけて、イタリア・セリエA(現スーパーリーガ)の強豪クラブで主力として活躍。当時、セリエAは「世界最高峰のバレーボールリーグ」と評され、フランス人選手がプレーすること自体珍しかったようですが、ロラン・ティリはレギュラーとしてチームに貢献していました。代表では1982年から1995年まで招集をされており、約400試合に出場。ヨーロッパ選手権での銀メダル獲得。ソウル・バルセロナオリンピックへの出場権獲得に貢献をしています。
現役を引退し、クラブチーム・チェコ代表の監督に就任
ロラン・ティリは2001年に現役を引退すると自身が所属をしていたフランス・リーグAのASカンヌの監督に就任します。2012年までの約11年間という長期政権により組織作りと哲学をチームに落とし込みます。その成果として、2004年にフランス・Aリーグで準優勝すると、翌年2005年にフランス・Aリーグで優勝。2007年にフランス・カップ制覇。2008年にはチャンピオンズリーグに進出など、古豪と言われていたチームを再び名門へと再建します。その手腕を買われて2005年から2006年までチェコ共和国代表チームの監督を兼任。1シーズンのみですが、2005年の欧州選手権でチームを9位に導くと2006年には世界選手権の予選を突破させて、本選への出場権を獲得します。
フランスの代表監督に就任
ASカンヌ、チェコ共和国代表監督での手腕が評価されたロラン・ティリは、ついに「母国フランスの監督」に就任します。ロラン・ティリが指揮をとったのは2012年から2021年の9年間。就任当初のフランス代表は低迷期にあり、成績も振るいませんでした。しかし、名将ロラン・ティリの就任により、2014年に世界選手権で4位入賞を果たすと翌年2015年に開催されたワールドリーグ、欧州選手権でチームを優勝に導きます。そして、2021年に開催された東京オリンピックで母国フランスに金メダルをもたらします。ロラン・ティリは低迷していたフランス代表を「オリンピック優勝」まで導く手腕の持ち主であるということですね。
大阪ブルテオン・日本代表の監督に就任
そんなフランスが誇る名将ロラン・ティリに大阪ブルテオン(旧パナソニックパンサーズ)がラブコールを送ります。難しいオファーかと思われましたがロラン・ティリはオファーを承諾。2020年から2025年5月までの5シーズンにわたり、チームを率いることとなります。初年度はレギュラーシーズンで首位ながらもプレーオフの準決勝で敗退し、最終順位は3位。2023‐24シーズンでは天皇杯を制し、更にV.LEAGUE DIVISION1 MENのレギュラーラウンドで優勝。ラストシーズンとなった2024‐25シーズンは新リーグとなったSVリーグでレギュラーシーズン優勝。世界の舞台でもACL(アジアチャンピオンズリーグ)で準優勝し、FIVB世界クラブ選手権への出場権を獲得します。ロラン・ティリが指揮をとっている間、リーグでは常にトップ争いに加わり国際大会でも実績を残すなど、国内バレーボールリーグの発展に大きく貢献しました。そして、2025年5月に大阪ブルテオンとの契約満了が発表されると、同時に男子バレーボール日本代表監督への就任内定が発表されました。
・ロラン・ティリ監督の育成方針

・ロラン・ティリ監督の育成論について
最後に多くの実績や結果を出し続けてきたロラン・ティリが「大切にしている育成論」を紹介したいと思います。今回紹介するのは「①選手選考はフィジカル・メンタル・技術を評価」「②ゲーム練習を核とした育成」「③対話を基盤とした信頼関係の構築」の3つです。
①選手選考はフィジカル・メンタル・技術を評価
ロラン・ティリは選手を「フィジカル・メンタル・技術」の3つを軸に評価をすると語っています。バレーボールで優位に戦いを進めるためにフィジカルが重要となることから強化は必須であり、特に日本代表は従来フィジカル面で劣っているとされてきたので特に重要視をしています。また、メンタルが弱い選手は大舞台や大事な場面で才能を発揮することができないことから、信頼してゲームを託すことが難しい。なので、どんな状況や場面で戦える強靭な精神力を持っている選手を優先しています。フィジカルとメンタルが優れていても技術(テクニック)がない選手はロラン・ティリが指示する柔軟な戦術を実現することができません。ロラン・ティリはこの3つの要素について、個別で評価するのではなく全体のバランスを重要視しています。フィジカルが少し劣っていてもメンタルが強く、技術に優れていれば評価される。逆に技術にはとても優れているが、フィジカル・メンタルが伴わない選手は評価をされません。
【ロラン・ティリが指揮したフランス代表の名選手】
②ゲーム練習を核とした育成
ロラン・ティリが育成方針として重視しているのが実戦練習の中で選手を育成するというアプローチ。チームの戦術を踏まえてゲームの中でどう判断するのか。どのプレーをどのタイミングで選択するのか。など選手に多くの意思決定や選択をさせることで、バレーボールの技術と戦術理解を同時に育てることを狙っています。また、ゲームの中でミスがでることは当たり前ですが、「なぜミスをしたのか」「次にミスをしないためにどうするのか」など、失敗から学ぶことを大切にしています。ただ、ゲーム練習を大事にしているからといって、基礎練習を疎かにしているわけでありません。ゲーム形式の中でできなかったプレーや自分の課題を見つけて練習をする。その成果をゲーム形式の練習試して、また失敗から学んだり課題を見つけるように促します。ロラン・ティリは「自立した選手を育てる」という思想を大切にしており、公式でもコーチの顔をうかがうのではなく、選手自身が考え、柔軟に行動できるチームが強いチームであると考えています。
【ロラン・ティリ率いるフランス代表のゲーム】
③対話を基盤とした信頼関係の構築
ロラン・ティリはチーム作り・選手育成において「対話を基盤とした信頼関係の構築」を非常に重要視しています。選手の声に耳を傾け、各選手の価値観や課題、目指している姿を理解しなければ戦術や技術指導をしても機能しないと考えているからです。また、チーム内での心理的安全性の確保も大切にしており、ミスに対しても怒ったり否定するのではなく、チャレンジした結果だと歓迎をする風土を醸成するよう心掛けています。選手は「ロボット」ではなく「人間である」ということを強く意識しており、モチベーションやメンタル、チーム内の空気感がプレーに直結するということを念頭に置いて指導をします。ロラン・ティリは過去の経験から「選手個人との人間関係」や「選手へのリスペクト」がチームに良い結果をもたらすと考えているのだと思います。
まとめ:ロラン・ティリが率いる日本代表に注目!
男子バレーボール日本代表監督のロラン・ティリについて、いろいろと解説・紹介してきましたが「これまでの実績」「指導者としての人間性」から素晴らしい監督である。ということが少しでも伝わっていると嬉しいです。フィリップ・ブランも監督として優秀であり、日本代表の躍進に欠かせなかった人物ですが、ロラン・ティリが率いるこれからの日本代表はもっと素晴らしい実績・結果を出してくれるものと信じています。
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