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Vリーグ‗チーム紹介シリーズ【JTサンダーズ広島編】

【Vリーグの魅力をもっと知りたい人】

「バレーボールのVリーグにはどんなチームがいるの?各チームの特徴や見どころを知って、もっと試合観戦を楽しみたい!!」

そんな人に向けて、今回はVリーグDIVISION1 MENに所属する「JTサンダーズ広島」について、紹介・解説をしていきたいと思います。よりVリーグ観戦が楽しくなると思いますので、少しだけお付き合いください。

■コンテンツ

・JTサンダーズ広島の概要と変遷

・JTサンダーズ広島の魅力と特徴

・JTサンダーズ広島に所属する代表的な選手

この記事では、国内バレーボールの最高峰「VリーグDIVISION1」に所属するチームの魅力を紹介しています。チームのことを少し知るだけで、観戦するときの感情移入の仕方が全然変わってきます。今回はJTサンダーズ広島の歴史や特徴。更には直近の成績、注目選手などを紹介していきたいと思います。

・JTサンダーズ広島の概要と変遷

・JTサンダーズの概要と歴史

JTサンダーズ広島の概要

JTサンダーズ広島は、1931年頃に創部された広島県広島市(猫田記念体育館)を拠点とするチームです。日本たばこ産業(JT)が運営母体であり、日本人選手のほとんどがJT社員で外国人選手や一部の日本人がプロ契約で所属をしています。日本たばこ産業(JT)はJTサンダーズ広島の他にVリーグDIVISION1に所属する女子チームの「JTマーヴェラス」も運営しており、バレーボールを「社技」としているようです。

JTサンダーズ広島のチーム名の由来はプレーする選手達の勇姿から、「稲妻(Thunder)」をイメージして名づけられたそうです。稲妻のように活躍する選手「達」が由来なので、Thunderに複数形のsをつけて「サンダーズ」ということですね。地元と更に密着したチーム運営を目指し、2019年から「広島」をチーム名に入れています。チームカラーはJTの企業カラーと同様に「緑」。JTのチーム広報から「緑色の格好いいユニフォームを作るのは大変」というぼやきを聞いたことがあります・・・。笑

前述のとおり、戦前から活動している古参のチームで、1967年から始まった全日本バレーボール選抜男女リーグ(日本リーグ)の初期から参加をしています。それから今日のVリーグに至るまで、1度も2部に落ちたことがない唯一のチームなので、歴史・実力ともにリーグの中でもトップクラスのチームと言えるでしょう。一方で、2014年まで準優勝が6回となかなかリーグ優勝ができず、チーム運営を疑問視されることもありましたが、2013‐2014シーズンで悲願のリーグ初優勝を果たし、名実ともに強豪チームの地位を確立します。

JTサンダーズ広島‗チーム概要

設立年 1932年頃
ホームタウン 広島県
監督 ラウル・ロサノ(2022-23シーズン時点)
事務局 広島市南区段原南1-3-53 広島イーストビル 14階 (お問い合わせ)
体育館 猫田記念体育館 (アクセス)
主なタイトル V・プレミアリーグ(優勝1回・準優勝1回)

JTサンダーズ広島の変遷

JTサンダーズ広島は、前述の通り、1931年頃に創部したリーグの中でも最も伝統のあるチームです。創部から強豪チームと言われている今日までの変遷を簡単にご紹介します。

【伝説のセッター‗猫田の時代】

昭和30年代(1950年代頃)、「広島専売」という名前で活動して頃ですが、チーム強化がうまく進まず、国体でベスト8止まり。補強がうまくいっていなかったこともあり、チームの状況はかなり苦しかったそうです。

この窮地を救ったのが、当時から徐々に力を付け始めていた地元広島の名門・崇徳高校から入部した「猫田勝敏」。1962年に鳴り物入りで入部した猫田は翌年の1963年には全日本入りを果たし、全日本男子でコーチを務めていた松平康隆からも一目置かれてる存在でした。

そんな猫田と同時期に全日本入りした「西本哲雄」が主力となり、チームを引っ張っていくことになります。この2選手がチームの主力であり、精神的な支えでもあったため、猫田が骨折し欠場すれば、下位リーグとの入れ替え戦を戦い。猫田と西本が全日本の招集され、チームの活動に参加できなくなると入れ替え戦。と、いかに猫田・西本の存在が大きかったがわかります。そんな猫田は1972年9月ミュンヘン五輪で正セッターとして金メダルを獲得「広島の猫田」から「世界の猫田」と呼ばれるようになります。

その後、猫田は選手発掘とチーム強化を期待されて監督に就任しますが、1983年(昭和58年)8月、胃がんによりバレーボールとともに歩んだ人生に幕を閉じます

【日本リーグからVリーグ】

1985年に運営母体である専売公社が民営化。「日本たばこ」と名称を変更し、更に1988年からは「JT」に名称を変更。この頃、専売広島時代が終わりを告げ、JTサンダーズの時代が始まります。

日本リーグ時代は2回準優勝をするものの、優勝することは一度もできませんでした。生前の猫田も「俺は世界一になったことはあるけど、日本一になったことがない。」という言葉を残しています。猫田・西本の後には、下村英士・原秀治・栗生澤淳一等、五輪代表選手を排出しますが、結局、リーグ優勝を果たすことはできませんでした

1994年からはリーグの名称が日本リーグからVリーグに変わり、チーム名も「専売広島」から、「サンダーズ」とします。同年に後の日本代表で主力選手に成長する平野信孝が入団します。更に外国人選手にロシア代表選手であるエフゲーニ・ミトコフ、オレーク・シャトーノフ、パーベル・シシキンらを補強し、Vリーグや全日本選手権(黒鷲旗)で度々優勝争いに加わるようにまるのですが、やはりリーグ優勝の壁は厚く、準優勝に止まります

【パルシン改革】

1999年にJTは大きな転換期を迎えます。これまでは、JTサンダーズのOBを監督に起用し、純血主義と呼ばれていたのですが、リーグ優勝を果たせない現状を打破するために外国人監督の招聘を決断します。その時に起用されたのが「元ソ連男子代表監督のゲンナジー・パルシン」です。チーム史上初の外国人監督であり、当初は一部のOBから反発もあったそうですが、改革を進め、元ソ連代表のオレーク・アントロポフをコーチに採用し、ロシア代表イリア・サベリエフを補強します。

パルシンのもと、これまでの「質」より「量」というJTの練習スタイルから、科学的・論理的な視点を重視した「質」を追求するスタイルに変更し、徐々に成果を出し始めます。2001年に黒鷲旗で初優勝を飾ると、2004年にも同大会で優勝。更に国体では2001年の宮城国体で20年ぶりに優勝を果たすと、翌2002年に高知国体で優勝して2連覇。2004年の埼玉国体・2005年の岡山国体でも2連覇を果たします。勢いのまま、2005年にはRPAペルージャに所属していた加藤陽一を獲得し戦力の強化を図ります

しかし、パルシン時代に3度もVリーグの決定戦に挑戦をするものの、すべてサントリーサンバーズに敗れ、あと一歩のところでリーグ優勝には届きませんでした

【迷走時代】

2006年にパルシンが勇退すると、JTサンダーズに「冬の時代」が訪れます。パルシンとともにJTサンダーズを支えていたコーチのアントロポフが監督に昇格しますが、翌2007年のリーグ開幕前に体調不良により帰国。当時コーチを務めていたコーチの栗生澤が監督代行。栗生澤のもと、同年の天皇杯で優勝して初代チャンプとなる検討を見せますが、Vリーグでは準決勝リーグへの進出を2年連続で逃します

2008年に堺での監督経験があるゴードン・メイフォースを監督に起用し、翌2009年には、更にJT出身ではない初の日本人コーチとなる久保義人を起用。同シーズンの天皇杯では準優勝をします。しかし、2010年にゴードン監督がギリシャ男子代表監督就任することとなり、チームを退団。コーチだった久保が監督に昇格します。同年の黒鷲旗では準優勝と健闘しますが、Vリーグ(2011/12シーズン)では7位と苦戦をし、18年ぶりの入替戦を戦うこととなります。なんとか、ジェイテクトSTINGSに勝利することで、プレミアリーグに残留はしましたが、チームの状況はかなり悪かったようです。

悪い雰囲気を変えることができないまま、2012-13シーズンにイゴール・オムルチェンを補強しますが、開幕から7連敗。同年11月には久保が体調不良のため監督を休養し、コーチだった徳元が監督を代行。チームはプレーオフ圏内にも進めなくなり、周囲から降格の危機も囁かれているような状態でした。

【ヴコヴィッチによる改革】

迷走するチームを強豪に返り咲かせるために、2つの改革に着手をします。1つ目は外国人監督の再起用。2013年に、元セルビア・モンテネグロ男子代表監督のヴェセリン・ヴコヴィッチを監督に起用。実績・経験ともに豊富な人材であり、データに忠実な戦略が特徴の監督でした。それに加え、円熟期を迎えた越川優を獲得。全日本でもエースを務める越川にプレーのみならず、若手選手達の精神的な支柱となることを期待します。

2013-14シーズンはイゴール/八子大輔ら既存の戦力に加えて改革が実り、チームは8年ぶりにVプレミアリーグ・セミファイナルラウンドに進出。セミファイナルラウンドも勝利し、10年ぶりに優勝決定戦に駒を進めます。しかし、またしても日本一の壁に跳ね返えされてしまいます。翌2014-15シーズンに、イゴールに変わる外国人選手枠として、ブラジル代表のレアンドロ・ヴィソットを補強。更に越川をキャプテンに指名します。すると同シーズンの天皇杯で2007年から7年ぶりとなるタイトルを獲得。更に同シーズンのVプレミアで2年連続の優勝決定戦進出を果たします。優勝決定戦の相手は因縁のサントリーサンバーズでしたが、死闘を制し、ついに創部から84年目で悲願のリーグ初優勝を飾ります

しかし、この後、ヴコヴィッチ監督が退任するとチームの成績は下がり、決勝に進出することが難しくなってしまいます。JT出身の選手でもあり、元オリンピック代表選手でもある原秀治が監督に就任するも、1シーズンで退任。現在は、ポーランドやイランの代表監督を歴任するなど実績が豊富であるラウル・ロサノ監督が就任。古豪復活に向けて、日々戦っています。

・JTサンダーズ広島の魅力と特徴

・JTサンダーズ広島の魅力と特徴

JTサンダーズ広島の魅力と特徴として、「バレースタイル」「チーム力」「サポーター」の3つ紹介します。

バレースタイル

JTサンダーズ広島のバレースタイルは「王道」です。技術・高さ・強さのバランスが非常に高く、トリッキーなトスワークやシステムを採用せず、シンプルで完成度の高いバレーボールを目指しています。オポジットへのトスを中心としつつ、アウトサイドヒッターで得点を重ね、要所でミドルによる速攻を織り交ぜる。アウトサイドヒッターもレセプション(サーブカット)が上手い選手を起用することが多く、安定感を大切にするバレースタイルと言えるでしょう。

チーム力

JT(日本たばこ産業)という大企業が運営母体であることもあり、能力も報酬も一流の外国人選手・日本人プロ選手を獲得することができるのが強味。過去にはロシア代表の主力だったサベリエフやブラジル代表のレアンドロ・ヴィソット。日本人選手だと代表で主将も務めた越川優や加藤陽一など、名だたる選手達を獲得しています。また、伝統と実績も申し分ないことから、各大学からのスカウトでも世代TOPレベルの選手を獲得していますね。平野信孝や八子大輔、小野寺大志など、代表で活躍する選手を何人も輩出しています。豊富な人材を揃えるJTは選手層も厚く、常に一定のチーム力を維持しているので、「王道」のバレースタイルで勝負ができるんだと思います。

サポーター

JTサンダーズ広島は他チームと比較して、とにかく地元で愛されています。バレー人気が低迷した時も、チームの成績が芳しくない時も、ホームゲームではファンが観戦に押し寄せ会場を満席にします。広島県民の「スポーツ大好き!」という県民性も大いに関係あると思いますが、長い歴史の中で「猫田」をはじめ、多くの名選手を輩出してきたからこそ、愛されているのだと思います。多くのサポーターとともに応援する一体感はスポーツ観戦の醍醐味ですよね!

 

・JTサンダーズに所属する代表的な選手

・JTサンダーズに所属する代表的な選手

JTサンダーズ広島の主力選手を紹介します。観戦する際は、ぜひ注目してみてください。

ミドルブロッカー

【小野寺大志】

出身 宮城県名取市
年齢(2023年3月時点) 27歳(1996年2月27日生まれ)
身長 201㎝
最高到達点/指高 345cm/260cm
プレースタイル スパイクの器用な打ち分けと知的なブロック

東京オリンピックでも日本代表チームの主力選手として活躍した小野寺大志選手。現状、日本一ミドルブロッカーといっても過言ではないと思います。高さがあることは当然のことながら、とにかく頭がいいです。ブロックの位置取り・相手の攻撃パターン推測の精度がかなりすごいです。勝負所で相手のエースをシャットアウトするブロックには痺れます。JTサンダーズ広島での活躍はもちろんですが、パリオリンピックでの活躍も期待されています。

アウトサイドヒッター

【新井雄大】

出身 新潟県上越市
年齢(2023年3月時点) 25歳(1998年6月27日生まれ)
身長 188㎝
最高到達点/指高 350cm/248cm
プレースタイル 圧倒的なジャンプ力を生かしたパワーヒッター

JTサンダーズ広島で一番の攻撃力を誇るのが新井選手。1メートル以上のハイジャンプから繰り出される強烈なスパイクは迫力満点です。ユース時代からアジアジュニア選手権・世界ジュニア選手権に出場し、U-23のアジア選手権ではベストアウトサイドヒッター賞も受賞しており、実績も申し分ありません。2020年には全日本代表のメンバーとしても登録されており、これからの活躍が楽しみな選手ですね。

セッター

【金子聖輝】

出身 福岡県福岡市
年齢(2023年3月時点) 26歳(1997年10月23日生まれ)
身長 190㎝
最高到達点/指高 337cm/247cm
プレースタイル 高さと機動力が抜群の攻撃的セッター

高校時代、東福岡高校のエースとして春高バレーを制覇している異色のセッター。高校卒業後、鳴り物入りでJTサンダーズ広島に入団し、アウトサイドヒッターからセッターに転向。アタッカーの気持ちを最も理解しているセッターと言えるでしょう。強気で、攻撃的なトスワークを好み、隙あらば自ら得点を狙ったりします。

リベロ

【西村信】

出身 山口県宇部市
年齢(2023年3月時点) 25歳(1998年10月7日生まれ)
身長 190㎝
最高到達点/指高 333cm/221cm
プレースタイル 守備範囲の広さとディグが自慢の守備職人

西村選手はとにかくディグ(スパイクレシーブ)への反応が驚異的なことと、守備範囲の広さが強味の選手。小学生の頃から地道にレシーブ練習を積み重ねてきているので、当然リベロとしての能力は高いです。が、それに加えて彼のポジティブで明るいキャラクターが素晴らしいです。チームが劣勢でも彼がコートにいることで、チームに活気を与えます。そんな姿を見ると、観戦してるだけで元気をもらえる気がしますね。

まとめ:歴史と伝統を誇る「正統派の強豪チーム」

JTサンダーズ広島はVリーグで最も長い歴史と伝統を誇るチームです。潤沢な運営資金を使い、一流の選手と監督を招聘することで、王道のバレースタイルを貫いています。ただ、本記事で紹介した通り、順風満帆で今日まで来たわけではありません。苦しみながら、試行錯誤しながら地元とともに歩んできたチーム。だからこそ地元から愛され、今でもトップリーグで活躍をしているわけです。最近では世代交代も進み、チーム自体が若返っているので、伝統と歴史を感じながら躍動する若い力を見守ってみるのも面白いと思います!

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