【セッターに挑戦したい・上達したい人】
「セッターに挑戦してみたいけど、なんとなく難しそうだし、周りにセッター経験者がいない。どういう役割なのかを理解したい。どうやったらセッターとして上達するのかを知りたい!!」
そんな人に向けて、今回はバレーボールのセッターはどんな役割のポジションなのか?どんな練習をすれば、上達することができるのか?について、解説をしていきたいと思います。セッター経験者やセッター練習を教えることができる人は意外と少なかったりするので、参考にしてみてください!
■コンテンツ
・セッターの役割とは?
・自宅で出来る効果的なトス練習3選
・日本代表を代表するセッターの特徴と凄さを解説
バレーボールにおいて、セッターはチームの司令塔であり、勝敗を左右する重要なポジションです。セッターが精度の高いなトスを上げることで、強烈なスパイクを打てる。セッターが相手ブロッカーの裏をかくことでスパイクの決定率を上げる。まさにチームの攻撃を司るポジションです。本記事では、そんなセッターについて、なるべく分かりやすく詳しく解説しています。
・セッターの役割とは?
・セッターの役割とは?
セッターにとって重要な役割は「打ちやすいトスを上げること」・「攻撃を組み立てること」・「コミュニケーション」の3つです。
・スパイカーが打ちやすトスをあげる
まずは、何と言っても正確でスパイカーが気持ち良く打てるボールを供給することが重要。どれだけ、敵のブロッカーの裏をかいても打てなければ意味がありません。よく、敵のブロックが追いつけないようにするために「とにかく速いトス」や「トリッキーなトス」を上げたがるセッターがいますが、まずは「打ちやすいトス」を心掛けましょう。
いいセッターの条件は、スパイカーの特徴や強味を理解し、それぞれのスパイカーが得意とするトスを安定して上げることができるかどうかです。クロスの得意な選手には少し短めにのトスを。ストレートが得意な選手には少し長めのトスを。オープントスが好きな選手には少し緩やかなトスを。平行トスが好きな選手には速めのトスを。などなど、スパイカーが10人いれば、10通りの得意なトスがあります。まずはスパイカーの得意不得意をしっかりと観察し、スパイカーの要求に応えることができるように技術を磨きましょう。
・攻撃を組み立てる
次に重要なのが、攻撃を組み立てること。要は誰に(アウトサイドヒッター・ミドルブロッカー・オポジット)に、いつ、どのくらいの割合でトス上げるのかを決める。ということです。どのスパイカーが調子が良さそうか?相手ブロッカーで身長の低い選手はだれか?相手のレシーバーはどんな攻撃を嫌がりそうか?等々、セッターは自チームの状況や状態・相手チームの弱点を把握しながら攻撃の組み立てを考えます。加えて、ゲームの流れを読むというのも重要なポイントです。序盤・中盤・終盤、リードしているのか?リードされているのか?等、場面によっても配球を変えます。更に相手ブロッカーの配置やどのスパイカーを警戒しているのかを読むことで、相手ブロッカーの裏をかくこともセッターの醍醐味ですね。チームの状態、相手の弱点、ゲームの流れ、相手ブロッカーの思考。などを踏まえて、「誰に」「どのタイミング」でトスを上げるを決めていくわけですから、まさに司令塔です。セッターというポジションはめちゃくちゃ奥が深いです。
・コミュニケーション
最後はコミュニケーションです。セッターは司令塔という重要な役割を果たすポジションなので、レシーバーもスパイカーも「セッターの動きや表情」を常に見ています。チームにおける影響力が最もあるポジションだといってもいいでしょう。だからこそ、普段からチームメイト達とコミュニケーションをとることで、チームの雰囲気やモチベーションをあげることができます。当然、スパイカーとのコミュニケーションも重要。打ちやすいトスをあげるためにスパイカーの要求や得意な球質を聞き出したり、モチベーションを下げないように声をかけたり。様々な場面でコミュニケーション能力を求められます。
・自宅で出来る効果的なトス練習3選
・自宅で出来る効果的なトス練習3選
セッターは、どんな状態からでも・どんな返球が返ってきても精度の高いトスを上げる。ということが要求されます。前述した「攻撃の組み立て」や「コミュニケーション」も重要ではありますが、まずはトスの技術が重要。ということで、自宅で出来るトスの練習方法を3つ紹介したいと思います。
1‗仰向けになった状態での直上パス
一つ目は仰向けになった状態での直上パスです。文字通り、寝たままの状態でオーバーパスをするだけ。ボールさえあれば、今すぐはじめられる簡単な練習です。
①仰向け(天井見たまま横になる)になる
②顔の前(おでこあたり)で直上パス(ボールは1mくらいの高さに上げる)
③100回連続で出来るようになるまで練習する
寝たままの状態で直上パスするくらい簡単でしょ?と思う人もいると思いますが、いきなり100回連続で出来る人はまずいないです。想像しているより難しいですよ。この練習では、寝たままの状態なので、腕・手のひらのみでボールをコントロールする必要があります。直上パスが少しでもズレると、どんどん落下地点がズレてきて、続けることができません。なので、正確にボールをコントロールするためのハンドリングが身に付きますし、肘や手首の使い方を自然と覚えることができます。
2‗頭の上で直上パス
2つ目は頭の上で直上パスをするという練習。ただの直上パスではなく、頭の上でボールコントロールする。ということがポイントです。セッターは、なるべく高い位置からトスを出すことができる。という技術が求められます。高い位置からトス出すことで、スパイカーにボールが届くまでの時間が短くなる。トスをどこに上がるのかギリギリまでブロッカーが判断できない。などの効果があります。頭の上で直上パスをすることで、頭より高いところでボールをコントロールする感覚が身に付きます。加えて、視界の外でボールをコントロールすることで、視野を広く持ちながらプレーをすることができるようになります。まずは連続で30回できるようになりましょう。
・つむじの真上くらいの位置で直上パスをする
・ボールの高さは50㎝くらいでOK
・顎は上げずに顔を真っ直ぐに保つ
・慣れてきたら、歩きながら直上パスをしてみる
3‗ワンハンドでの直上パス
最後はワンハンドでの直上パス。文字通り片手でオーバーハンドパスを繰り返す練習です。この練習で、指先でボールを弾く感覚を身に付けます。トスが飛ばない・トスをあげる時にボールを持ってしまう人。などは、ぜひ試してみてください。直上パスの位置は、おでこの前あたりを目安として、手のひらではなく親指から小指まで全ての指でボールを弾く。ということを意識しましょう。ボールが落下してくる時は少し力を抜いて構えておいて、指先に触れたと感じた瞬間に強く指を押し出してください。左右ともに10回程度、連続で出来れるようになるとトスの質が良くなります。
・日本代表を代表するセッターの特徴と凄さを解説
・日本代表のセッターの特徴と凄さを解説
日本人は世界の強豪国と比較すると、フィジカルが強くありません。なので、純粋に「背の高さ」・「ジャンプ力の高さ」・「力の強さ」で勝負をしても勝てません。だからこそ、様々なパターンのコンビネーションを生み出し、技術やアイディアで勝負できるように創意工夫を続けてきました。そんな日本代表の戦い方を支えてきたのが「セッター」です。その中でも特に凄い!と思うセッターを男女1名づつ紹介したいと思います。
男子選手‗深津英臣
3兄弟の末っ子なのですが、兄の二人もVリーガー。「愛知の深津3兄弟」と言えば、男子バレーボール業界ではかなり有名です。現在はV.LEAGUE DIVISION1の強豪、パナソニックパンサーズの中心選手として活躍しており、21年まで日本代表でも活躍をした選手。深津英臣選手の凄いところや特徴は「シンプルで攻撃的なトスワーク」・「リーダーシップ」・「ディグ(スパイクレシーブ」です。
【シンプルで攻撃的なトスワーク】
シンプルなトスと聞くと簡単そうに感じるかもしれませんが、なかなかできることではありません。無駄な動きをはぶき、常に同じフォームで機械的にトスを上げられる選手は、プロでもなかなかいません。ブロックをかわすような「華麗なトスやトリッキーなプレイがすごいのでは?」と思う方も多いかもしれませんが、男子のVリーグや代表戦になると、ミドルブロッカーの身長が普通に2mを超えてきます。そんな巨人のような選手相手にセッターが小手先の技術でボール溜めて(止めて)しまうと、一瞬で追い付かれてしまいます。なので、無駄な動きをはぶき、シンプルでスピーディーなトスワークが重要になる訳です。
【リーダーシップ】
「セッターの役割とは?」のパートでも解説しましたが、セッターはチームの司令塔であり、最も影響力のあるポジションです。深津選手はそんな中でも、リーダーシップに秀でており、パナソニックパンサーズでも、日本代表でも常に中心選手であり続けました。彼の「バレーボール」と「勝利」に対する熱意は敵チームを圧倒し、味方チームに勇気を与えてくれます。ひたむきに練習に取り組み、試合では常に声を張り続け、そして実績を出し続けている深津選手だからこそ、周囲から厚い信頼を得ているわけです。ベテランからは慕われ、若手からは尊敬される。選手としても人間としても素晴らしいアスリートの一人だと思います。
【ディグ(スパイクレシーブ)】
セッターは、後衛にいる時には守備陣(レシーバー)の一員となります。なので、トスだけを上げていれば良い。ということではありません。深津選手も守備に参加をするのですが、スパイクに対する反応速度がずば抜けて優れていると思います。ブロックを抜けてくる速攻(AクイックやBクイック)を普通に上げてしまったり、外国人選手の強烈なスパイクに対応したり。ディグだけであれば、リベロの選手と遜色ないどころか、その辺のリベロよりすごいと思います。深津選手の試合や動画を見る際には、トスだけでなくディグ(スパイクレシーブ)にも注目してみて下さい。
女子選手‗竹下佳江
女子ですごい!と思う選手は、全日本代表で「世界最小最強セッター」と呼ばれた竹下佳江選手(現姫路ビクトリーナ監督)。現役時代はNECレッドロケッツ⇒JTマーヴェラスに所属しておいり、アテネオリンピック・北京オリンピック・ロンドンオリンピックに3大会連続で出場し、ロンドンオリンピックでは、ロサンゼルスオリンピック以来、28年ぶりの銅メダル獲得に貢献したレジェンドです。竹下選手の凄いところは「正確無比なトスワーク」・「闘志と冷静さを併せ持つ選手」・「守備範囲の広さ」です。
【正確無比なトスワーク】
竹下選手は小柄な選手だったため、とにかく正確で打ちやすいトスを追求していました。同じくらいのクオリティのトスを上げられる選手がいるなら、普通は大きな選手を起用します。更に竹下選手は相手ブロッカーの心理や動きを読むのが得意で、相手ブロッカーが追いつけない。ブロックの完成が遅れてしまう。という場面を1試合の中で何度も作ります。それだけの高い技術を持っていたので、小柄ながら日本代表に選出され、長年にわたり活躍できたのだと思います。
【闘志と冷静さを併せ持つ選手】
だいたいのアスリートは負けず嫌い。当然、竹下選手も負けず嫌いで闘志剥き出しのプレーを見せることも多かったです。そんな彼女が他の選手よりも優れていたのは、感情が高ぶっていても常に冷静だったところです。普通の選手は熱くなり、ミスを連発したりプレーが単調になってしまったりしますが、竹下選手は違います。常に試合に勝つためにはどうすればよいか?どういったトスワークが効果的か。を論理的に組み立てられる選手でした。熱くなりながらも、冷静な判断を下せる。セッターに最も必要なメンタルを持っている選手です。
【守備範囲の広さ】
竹下選手も深津選手と同様にレシーブが得意なセッターでした。特に守備範囲の広さには驚かされます。相手スパイカーの虚を突くフェイントを拾ったり、味方が大きく弾いたボールに追いつてみせたり。何度もチームのピンチを救ってきた竹下選手の「反応速度」と「俊敏さ」は世界でもトップレベルでした。「小柄である」というアドバンテージがありながら、世界と対等に戦えたのは、突出したレシーブ能力も理由の一つだと思います。
まとめ:セッターはチームを指揮する司令塔
セッターは、自身のトスワークによって、チームの勝敗が左右される重要なポジション。また、精神的な支柱であることも多く、強いメンタリティも要求されます。なので、バレーボールのポジションの中で最も難しいポジションと言えるでしょう。ですが、コートに入れば意のままに攻撃(スパイカー)を差配し、自身の意図で試合をコントロールできる。という特別なポジションです。なので、個人的には最もやりがいのあるポジションだと思います。
今回、解説したセッターの「役割」を理解し、「練習」でトスの精度を上げて、「素晴らしい選手達」を参考にしつつ、セッターというポジションに挑戦してみてください。
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